心理学者 / cognitive

アルバート・エリス

アルバート・エリス

アメリカ合衆国 1913-09-27 ~ 2007-07-24

アメリカの臨床心理学者(1913-2007)。1955年に論理療法(Rational Therapy)を発表し、後に理性感情行動療法(REBT)へと改称、ABCモデルと非合理的信念の概念で認知行動療法の基礎を築いた。アルバート・エリス研究所を設立して長年指導したが、2005年に同研究所の理事会から除名され翌年復帰した経緯がある人物である。性愛や宗教への直言と対決的セッション・スタイルでも知られた。

この人から学べること

エリスのABCモデルはリーダー・投資家・起業家にとって最強の感情マネジメント・ツールである。市場急落や交渉決裂などA(出来事)に直面したとき、人は怒りや絶望が直接的に起こると錯覚するが、実際にはB(「失敗してはならない」「全員に好かれねばならない」)が介在している。Bを特定し非合理を反駁する習慣だけで行動の質は変わる。彼の「無条件の自己受容」は四半期決算や運用成績に晒される経営者の耐久力の柱になる。ただし彼の対決的なセッション・スタイルは現代の心理的安全性論からは過剰であり、技法は採用しつつデリバリーは時代に合わせて修正する必要がある。

心に響く言葉

私たちを縛る3つの「ねばならない」がある——私はうまくやらねばならない、あなたは私を良く扱わねばならない、そして世界は易しくあらねばならない、というものである。

There are three musts that hold us back: I must do well. You must treat me well. And the world must be easy.

人生で最良の年月は、自分の問題は自分のものだと決断したときに始まる。母のせいでも環境のせいでも大統領のせいでもないと気づき、自分の運命は自分で握っているのだと自覚するときである。

The best years of your life are the ones in which you decide your problems are your own. You do not blame them on your mother, the ecology, or the president. You realize that you control your own destiny.

あなたのうつ病は、ほぼあなた自身が構築したものである。誰かに与えられたものではない。だからこそ、あなたはそれを脱構築できる。

You largely constructed your depression. It wasn't given to you. Therefore, you can deconstruct it.

人や物事が私たちを動揺させるのではない。私たち自身が、それらに動揺させられると信じることで自分を動揺させているのだ。

People and things do not upset us. Rather, we upset ourselves by believing that they can upset us.

愛の技術は、その大部分が粘り強さの技術である。

The art of love is largely the art of persistence.

生涯と功績

アルバート・エリスは1913年9月27日、ペンシルベニア州ピッツバーグでロシア帝国およびガリツィアからのユダヤ系移民の家庭に生まれた。3兄妹の長子だが両親は情緒的に疎遠で、幼少期には腎臓病・扁桃炎・連鎖球菌感染症で8回入院、一度はほぼ1年の入院を経験した。自伝で母を「双極性障害をもつ自己中心的なおしゃべり」と評し、両親はほとんど見舞いに来なかったと記している。19歳のとき、対人不安克服のため彼はブロンクス植物園で1か月かけて100人の女性に話しかける自己暴露を強行し、後年の認知行動的アプローチの萌芽となった。一方、自伝で彼は10代から20代にかけて何百回もの非合意の接触(フロッタリスム)を行ったと自ら告白しており、これは現代的に見れば重大な性的加害として批判されている事実である。

1934年にニューヨーク市立大学を卒業し、ビジネスとフィクション執筆で挫折した後、人間性愛を扱うノンフィクションで成功、臨床心理学に転じた。1942年からコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジで博士課程に進み、1943年に修士、1947年に博士号(臨床心理学)を取得。その後カレン・ホーナイ研究所でユング派の訓練を受け精神分析家として開業したが、長期分析の効率の悪さに失望し、1953年までに精神分析と完全に決別した。

1955年、彼は「論理療法(Rational Therapy)」を提示する。後にABCモデルとして知られる枠組み——A(activating event)が直接Cの感情を引き起こすのではなく、間にB(belief)、特に「~ねばならない」「絶対に~であるべきだ」といった非合理的信念が介在する——は、彼の臨床経験とアルフレッド・コージブスキーの一般意味論、そしてストア派哲学(エピクテトスとマルクス・アウレリウス)に大きく依拠していた。1959年に彼はマンハッタンに非営利のアルバート・エリス研究所を設立、1962年には金字塔『Reason and Emotion in Psychotherapy』を刊行し、1995年に手法名を理性感情行動療法(REBT)に改名した。1982年の米加臨床心理学者世論調査で「最も影響を与えた心理療法家」第2位(1位カール・ロジャーズ、3位フロイト)に選ばれ、生涯で80冊以上の著書と1,200本超の論文を残した。

功罪両論は鮮明である。功の側では、認知の介入によって短期で感情・行動の変容を狙うREBTは、CBTの直接的祖型として認知行動療法ファミリー全体の確立を加速させた。1971年の米国ヒューマニスト協会「年間ヒューマニスト賞」、1985年と2013年(死後)のAPA特別貢献賞も得ている。罪の側では、彼の対決的・しばしば罵倒的なセッション・スタイルは「機械的で侵襲的」と批判され、ステージ上での公開セッションは賛否を呼んだ。1965年の著書『Homosexuality: Its Causes and Cure』では同性愛を病理として扱ったが、1973年のAPAによる脱病理化を受けて1976年に立場を修正している。さらに2005年、自身が設立した研究所の理事会からマネジメント方針の対立で除名され、ニューヨーク州裁判所の判決で2006年1月に復帰したが、晩年に法廷闘争で過ごす遺恨を残した。

2007年7月24日、マンハッタン自宅で93歳で逝去。死因は腎不全と心不全であった。短期で効果的な心理療法を実証主義的に確立した功績は決定的だが、その人格と行動の影は同時代の人々の証言として残り、彼の遺産は功と罪の双方を踏まえて評価される必要がある。

専門家としての評価

現代心理療法史において、エリスはストア派の知恵を実証主義的心理療法へと翻訳した中継者である。ABCモデルと非合理的信念の概念化はCBTファミリーの理論的祖型を成し、1982年世論調査でフロイトを抜いて影響度2位という史実は彼の浸透力を物語る。功績の核は短期療法の地位確立だが、罪として若年期の性的加害告白・対決的セッション・1965年の同性愛病理視・2005年の研究所追放劇が並ぶ複合的遺産である。

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よくある質問

アルバート・エリスとは?
アメリカの臨床心理学者(1913-2007)。1955年に論理療法(Rational Therapy)を発表し、後に理性感情行動療法(REBT)へと改称、ABCモデルと非合理的信念の概念で認知行動療法の基礎を築いた。アルバート・エリス研究所を設立して長年指導したが、2005年に同研究所の理事会から除名され翌年復帰した経緯がある人物である。性愛や宗教への直言と対決的セッション・スタイルでも知られた。
アルバート・エリスの有名な名言は?
アルバート・エリスの代表的な名言として、次の言葉があります:"私たちを縛る3つの「ねばならない」がある——私はうまくやらねばならない、あなたは私を良く扱わねばならない、そして世界は易しくあらねばならない、というものである。"
アルバート・エリスから何を学べるか?
エリスのABCモデルはリーダー・投資家・起業家にとって最強の感情マネジメント・ツールである。市場急落や交渉決裂などA(出来事)に直面したとき、人は怒りや絶望が直接的に起こると錯覚するが、実際にはB(「失敗してはならない」「全員に好かれねばならない」)が介在している。Bを特定し非合理を反駁する習慣だけで行動の質は変わる。彼の「無条件の自己受容」は四半期決算や運用成績に晒される経営者の耐久力の柱になる。ただし彼の対決的なセッション・スタイルは現代の心理的安全性論からは過剰であり、技法は採用しつつデリバリーは時代に合わせて修正する必要がある。