投資家 / グロース

1957年佐賀県鳥栖市生まれ、ソフトバンクグループを創業し、アリババへの2000万ドルの投資を750億ドル規模に成長させた大胆な投資家にして実業家。ビジョン・ファンドでテクノロジー企業への大規模投資を推進する一方、ドットコムバブル崩壊時には歴史的な資産喪失も経験した。300年企業構想を掲げる日本発のグローバル投資家である。
名言
髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである。
情報革命で人々を幸せに
リスクを取らないことが最大のリスクだ
最初にあったのは、夢とそして根拠のない自信だけ。そこからすべてが始まった。
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孫正義の投資人生は、NISAやiDeCoで資産形成を始めた個人投資家にとって、反面教師と成功事例の両面から学ぶべき豊富な教材を提供する。アリババ投資の成功が示すのは、長期的なテクノロジートレンドを見極め、確信を持って投資を継続することの威力である。一方、ウィーワークやビジョン・ファンド第二号の損失は、いかに優れたビジョンがあっても個別の投資判断を誤れば巨大な損失につながることを教えている。個人投資家が孫の手法から直接学ぶべきは、全資産を一つのテーマに賭けるスタイルではなく、テクノロジーの大きな変化を読む視座を持ちつつも分散投資で守りを固めるバランス感覚である。また、ドットコムバブル崩壊で99%の下落を経験しても投資を継続した精神的回復力は、暴落局面で売り急がないための心理的な参考になる。iDeCoのような長期制度では、短期の暴落に動揺せず積立を継続する忍耐力が最終的なリターンを決定づける。
ジャンルの視点
投資家の類型において孫正義は、実業家兼ベンチャーキャピタリストという独自のカテゴリに位置する。バフェットのように公開市場で割安株を探すのではなく、テクノロジーの未来像に賭けて未上場企業から大手テック企業まで幅広く資金を投じる。ソロスのマクロ投資とも異なり、孫は個別企業の経営者の資質とビジョンを重視する。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの規模は従来のベンチャーキャピタルの常識を超えており、テクノロジー投資のあり方そのものを変えた。その投資スタイルは極端なハイリスク・ハイリターンであり、一般の投資家が模倣するのは困難である。
プロフィール
孫正義は、日本のテクノロジー産業と投資の世界において最も大胆かつ論争を呼ぶ存在である。一つの投資判断で数兆円規模の利益を生み出すこともあれば、同規模の損失を計上することもある。その振れ幅の大きさこそが孫正義の本質であり、彼を評価するには成功と失敗の両面を見る必要がある。
1957年、佐賀県鳥栖市に在日韓国人の家庭に生まれた。本名は安本正義であったが、後に帰化している。16歳で単身渡米し、カリフォルニア大学バークレー校で経済学を学んだ。在学中に自動翻訳機の特許をシャープに売却して資金を得るなど、学生時代から起業家としての片鱗を見せていた。1981年に日本ソフトバンクを設立し、当初はパソコン用ソフトウェアの流通業からスタートした。創業時のエピソードとして、みかん箱の上に立って二人のアルバイトに「将来は売上1兆円、2兆円の会社にする」と宣言したという逸話が知られている。
1990年代にはコンピュータ関連の出版事業や展示会事業を展開し、1996年にはヤフー・ジャパンを共同設立するなど、インターネットの商用化の波に乗って急成長を遂げた。しかし孫を投資家として歴史に刻んだのは、2000年のアリババ・グループへの約2000万ドルの投資である。創業者ジャック・マーとの短い面談の後に決断されたこの投資は、2014年のアリババIPO時点で約750億ドルの価値に成長し、単一の投資案件としては歴史上最も成功した事例の一つとなった。
一方で、2000年のドットコムバブル崩壊では、ソフトバンクの株価が約99%下落し、孫個人の資産も700億ドル以上喪失したと報じられている。これは当時、一個人が失った資産額としては史上最大であった。しかし孫はこの壊滅的な打撃から立ち直り、携帯電話事業への参入(ボーダフォン日本法人の買収)やスプリントの買収など、大胆な事業拡大を続けた。
2017年に設立されたソフトバンク・ビジョン・ファンドは、約1000億ドルという前例のない規模でテクノロジー企業への投資を行った。ウーバー、ウィーワーク、ディディなど世界中のテクノロジー企業に巨額を投じたが、ウィーワークの上場失敗やその後の評価額暴落など、大きな失敗も経験した。ビジョン・ファンドの第一号は最終的にプラスのリターンを計上したが、第二号は大幅な損失を記録している。
孫の投資哲学は、テクノロジーが社会を変革するという強い確信に基づいている。彼は「情報革命で人々を幸せに」というビジョンを掲げ、300年続く企業グループの構築を目標としている。個別企業の財務分析よりも、技術トレンドの大局観と経営者の資質を重視する投資スタイルは、ベンチャーキャピタルに近い。リスク管理という観点では、孫のアプローチは従来の投資家の常識とは大きく異なる。集中投資とレバレッジを多用し、一つの判断が全体の命運を左右しうる構造を取ってきた。この手法は成功時のリターンを極大化するが、失敗時の損失も巨大となる。
2024年にはAI分野への注力を鮮明にし、ARM社の経営権取得や米国でのAIインフラ投資構想を推進している。孫の投資人生は現在進行形であり、最終的な評価は彼が信じるテクノロジー革命の帰結に懸かっている。成功も失敗もスケールが桁違いであるという事実が、彼の投資家としての本質を物語っている。2024年にはタイム誌の「AI分野で最も影響力のある100人」に選出されるなど、その存在感は投資の枠を超えている。