投資家 / バリュー投資

ジェレミー・グランサム

ジェレミー・グランサム

イギリス 1938-10-06

20世紀イギリス出身のバブル予測の達人

GMOを共同創設し主要バブル崩壊を事前に警告し的中させた

資産価格の平均回帰を知ることが楽観への最良の解毒剤

1938年英国生まれ、ボストン拠点の資産運用会社GMOの共同創設者にして首席投資ストラテジスト。2000年のITバブル、2008年の住宅バブルなど主要なバブル崩壊を事前に警告し的中させた実績から「バブル予測の達人」と呼ばれる。1970年代には最初期のインデックスファンドを立ち上げた先見性も持ち合わせる、逆張りの知性派投資家である。

名言

リスクを取ることで報われるのではない。割安な資産を買うことで報われるのだ。

You don't get rewarded for taking risk; you get rewarded for buying cheap assets.

GMO Quarterly LettersUnverified

投資ビジネスの核心的真実は、投資行動がキャリアリスクに駆動されているということだ。

The central truth of the investment business is that investment behavior is driven by career risk.

GMO Quarterly LettersUnverified

すべてのバブルは崩壊する。すべてだ。例外なく。

All bubbles break. All of them. Without exception.

Unverified

市場はあなたが破産するよりも長く非合理でいられる。

The market can stay irrational longer than you can stay solvent.

Disputed

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現代への応用

グランサムのバブル分析と平均回帰の思考法は、資産価格が史上高値圏にある局面で投資を始める現代の日本人投資家にとって、冷静さを保つための知的武器となる。新NISAの開始により2024年以降に投資を始めた層は、米国株の長期上昇トレンドの中で「株は常に上がる」という楽観に傾きがちである。グランサムが示す歴史的データは、資産価格が長期平均から大幅に乖離した状態は持続不可能であり、いずれ修正が訪れるという冷厳な事実を教えてくれる。これは投資を止めろという意味ではなく、ポートフォリオの資産配分を定期的に見直し、過熱したセクターへの過度な集中を避けるという実務的な規律に繋がる。また「キャリアリスクが投資行動を歪める」という洞察は、資産運用会社がなぜ強気相場で慎重論を述べられないかを理解する鍵であり、投資家が他者の推奨を盲信しないための構造的な理解を提供する。

ジャンルの視点

投資家ジャンルにおいて、グランサムはバリュー投資家でありながらマクロ分析を得意とする独特の位置を占める。個別銘柄選定よりも資産クラス全体の割高・割安判断に強みを持ち、この点でバフェットやグレアムとは異なるアプローチである。平均回帰理論に基づくバブル予測は、ジョージ・ソロスの再帰性理論とは異なる角度から市場の非効率性を説明する。リスク志向は保守的で、バブル局面ではキャッシュ比率を高める防御的運用を行う。環境問題への関心は投資家としては異色だが、長期的な資源制約が市場に与える影響という文脈で一貫性を持つ。

プロフィール

ジェレミー・グランサムは、金融市場における過熱と崩壊のパターンを数十年にわたり研究し、他の投資家が陶酔する局面で一貫して警鐘を鳴らし続けてきた人物である。その警告が繰り返し的中してきた実績は、市場の効率性を盲信する風潮に対する強力な反証となっている。

1938年10月、英国に生まれたグランサムは、シェフィールド大学で経済学を学んだ後、ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得して米国に渡った。1977年にジェレミー・グランサム、メイヨー、ファン・オッタールーの三名でGMO(Grantham, Mayo, Van Otterloo)をボストンに設立した。GMOは2015年3月時点で運用資産が1180億ドルを超え、米国有数の資産運用会社に成長したが、その後資産規模は650億ドル程度にまで縮小している。

グランサムが投資史に名を刻んだのは、主要なバブルの警告と予測においてである。2000年のITバブル崩壊に先立ち、テクノロジー株の過大評価を公然と指摘した。当時、ナスダック指数が急騰する中でバブルを警告することは大きなビジネスリスクを伴い、実際にGMOは顧客資金の流出に直面した。しかし2000年以降の急落により、グランサムの分析の正しさが証明された。同様に、2007年から2008年にかけての住宅バブルと金融危機についても事前に警告を発しており、この連続的な的中が「バブル予測の達人」という評価を確立した。

グランサムのバブル分析の特徴は、統計的な平均回帰(mean reversion)の理論に基づいている点にある。彼は、資産価格が長期的な平均から大きく乖離した場合、いずれ平均に回帰するという法則性を、歴史的データで繰り返し実証してきた。この分析手法は、感情や物語に駆動される市場の短期的動向に惑わされず、冷静に割高・割安を判定するための知的フレームワークを提供するものであった。

注目すべきは、グランサムが1970年代初頭に最初期のインデックスファンドを立ち上げていた事実である。ジョン・ボーグルによるバンガードの設立(1975年)とほぼ同時期であり、パッシブ運用の可能性にいち早く着目していたことを示す。バブルを予測するアクティブ運用者でありながら、市場全体を低コストで保有するインデックス投資の有効性も認識していたという点は、グランサムの知的柔軟性を物語っている。

政策面では、2008年金融危機後の各国政府の対応について積極的に発言し、金融緩和政策への過度の依存が新たなバブルを醸成する危険性を訴えた。2011年にはブルームバーグ・マーケッツ誌の「最も影響力のある50人」に選出されている。近年は環境問題への関心も深め、グランサム環境トラストを通じて気候変動対策への大規模な寄付を行っている。持続可能な経済成長と資源制約のテーマは、彼の長期的な市場分析と自然に接続するものであった。

グランサムのGMO四半期レターは、バフェットの株主書簡と並んで投資家コミュニティで最も注目される定期発信の一つとなっている。データと歴史に基づく緻密な分析は、市場の過熱を可視化する道具として機能し、多くの機関投資家の資産配分判断に影響を与えてきた。

グランサムの存在は、投資の世界における「不都合な真実の語り手」の価値を示している。短期的に不人気な見解を述べる勇気と、長期的なデータに基づく冷静な分析力の組み合わせは、群衆心理が支配する金融市場において希少かつ不可欠な役割を果たしてきた。